本研究会の会員による論文解説を掲載します。 【タイトル】メチル-β-シクロデキストリン (MBCD) による生体膜脂質環境の変化がマウス冷蔵精子の超活性化を誘起する 【著者】吉本英高1、竹尾 透1、入江徹美2、中潟直己1 1 熊本大学 生命資源研究・支援センター 動物資源開発研究施設 (CARD) 資源開発分野 2 熊本大学 大学院生命科学研究部 薬剤情報分析学分野 【内容】遺伝子改変マウスの輸送には、主に生体による輸送が実施されているが、生体輸送に際して、微生物学的汚染の拡大、輸送中の逃亡や死亡、遺伝子組換え生物の使用に関する法規制および実験動物の福祉の観点から、代替する技術の開発が求められている。そこで我々は、精子の低温保存技術に着目し、遺伝子改変マウスを冷蔵輸送し、輸送された精子を用いた体外受精・胚移植により個体を作製するシステムの構築を試みた。冷蔵保存した精子は、保存期間の延長に伴い受精能の低下が起こるが、メチル-β-シクロデキストリン (MBCD) を処理することで受精能の改善が可能である。しかしながら、マウス冷蔵精子におけるMBCDの受精能改善効果に関する、詳細なメカニズムは不明である。そこで本研究では、MBCDによる受精能改善効果を解明することを目的として、MBCDが冷蔵精子の体外受精率、精子生体膜中コレステロール量、精子先体反応誘起率および精子運動能に及ぼす影響を調べた。その結果、冷蔵精子におけるMBCDの高い受精能改善作用は、強力なコレステロールの除去能が関与していることが示唆された。さらに、MBCDによる精子生体膜中コレステロールの除去は、冷蔵精子における受精能獲得 (超活性化および先体反応) の誘起に密接に関わっている可能性が示唆された。 【出典】 Fertility of cold-stored mouse sperm is recovered by promoting acrosome reaction and hyperactivation after cholesterol efflux by methyl-β-cyclodextrin Hidetaka Yoshimoto Toru Takeo Tetsumi Irie Naomi Nakagata Biol Reprod bio142901. DOI: https://doi.org/10.1095/biolreprod.116.142901 URL: https://academic.oup.com/biolreprod/article/2948758/Fertility-of-cold-stored-mouse-sperm-is-recovered
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