発生工学は、「主に哺乳動物を対象として、生殖細胞、初期胚あるいは多分化能を有する細胞に対し、何らかの遺伝子操作を加えて発生の過程を操作する方法や、その操作によって得られた動物の解析や利用を研究する領域」と理解することができます。つまり、発生工学は、分子生物学(遺伝子工学)、生理学(病態生理学)、組織学(病理学)、実験動物学、繁殖学(生殖工学)などから構成される統合的な研究領域であり、in vivoの遺伝子機能解析系であると考えられます。
また、生殖工学は人工繁殖技術や生殖補助医療技術を包含するとともに、生殖細胞・胚操作技術を中心とした発生工学の一部を構成する研究・技術領域であると考えられます。胚操作技術の単独利用で本来in vivoで起きる現象をin vitroで再現させることや、自然界では存在し得ない個体の人為的作成を発生工学に含める考え方もあるようですが、これらは生殖工学に分類されるのが適切かと思われます。
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大きな違いは、冷却した際に、氷の結晶が細胞内外に形成されるか否かです。凍結保存方法は氷の結晶を成長させながら冷却します。一方、ガラス化保存は氷の結晶を生じさせずに冷却します。
哺乳動物の卵子や胚の細胞質は、85%程度が水で構成されています。これらの細胞を氷点下まで冷却すると氷晶を形成しますが、細胞内の氷晶形成は細胞を物理的に破壊することになるので、細胞の凍結保存においては、これを防ぐことが最大の課題と言えます。このため、保存液に凍結保護物質を添加しています。細胞を長期間保存するためには、(多くの水分を含む)細胞を固体にしなければなりませんが、液体が固化する場合には氷晶を形成する場合と形成しない場合があり、後者をガラス化(vitrification)と呼んでいます。これは、低温下で液体の粘度が高まり、一定の温度(ガラス化転移温度)以下で固化する現象で、氷晶を形成しないのが特徴です。ちなみに、細胞内のガラス化転移温度は−130℃ですので、ガラス化した細胞の保存には、ドライアイス(−79℃)ではなく液体窒素(−196℃)が必要です。 |