死亡した動物が飼育されていた動物室の温度・湿度などにも左右されると思いますが、通常の飼育室(温度:22±2℃前後、湿度:40.60%)では、C57BL/6J(12〜13週齢)の場合、死亡後12〜18時間以内であれば、死亡個体から採取した精子で体外受精が可能です。体外受精率は、死後12時間で約50%、死後18時間で約20%を経験しています。尚、体外受精に用いた卵子は凍結卵丘除去卵子(凍結法:簡易ガラス化法)です。ルーチンワークでは、実際に雄マウスが死亡した場合、新鮮卵子を用いて体外受精を行うのは不可能であるため、凍結卵丘除去卵子を用いたデータを記載しました
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TYH培地は受精用の培地ですので胚盤胞期までの培養は困難です。体外受精卵を胚盤胞まで培養する場合は、体外受精当日の前核期から体外受精翌日の午前中までに培養用の培地(例えばTYH-280、kSOM、Whitten+100μEDTA等)の培養用培地に胚を移し替えたほうが良いと思います。
ちなみに、Whitten+100μM EDTA培地は体外受精から胚盤胞までの培養を通じて使用することが可能です。 Q25:受精用あるいは培養用培地の最少液量は集団培養と個別培養でどのくらいでしょうか(マウス、ウシ)?例えば、体外受精用ドロップを300μlで作成した場合、何匹の雌(もしくは何個の卵子)がそのドロップで受精可能でしょうか?
ウシでは卵子や胚を個別に体外培養すると胚盤胞への発生率が低いため、多くのラボでは最低5個以上で卵子や胚の培養が実施されています。培養用培地の最少液量は、メディウムチェンジの有無等でラボによって異なりますが、卵子や胚1個あたり1〜1.5μlとして用いられています。体外受精用では多くのラボで1卵子あたり5μlの培地が使用されていますので、体外受精用ドロップ300μlでは60個の卵子を培養可能です。(Nagao Y, Iijima R, Saeki K. (2008) Interaction between embryos and culture conditions during in vitro development of bovine early embryos. Zygote 16, 127.133. 保存条件に依存するでしょうが、開封後はパラフィルムで覆い冷蔵庫で保存することによって、3日後までなら使用できることを経験しています。いずれにしても、説明書にしたがって取り扱うことをお勧めします。
Q27:培養用ドロップを覆うオイルについて、フィッシャー社製のオイルは洗浄(オイルに培養液を入れて数日スターラーにて撹拌する操作)してから使用していますが、他社製のオイルには洗浄無しでも使えるものがあります。なぜフィッシャー社製のオイルは洗浄が必要なのでしょうか?
元来、ミネラルオイルを培養液で洗浄するのは、オイルの中に含まれている水に溶けだす物質を吸着させる目的で実施されてきました。したがいまして、その懸念のないオイルであれば洗浄操作を行わなくても問題ないと思われます。 一部で「フィッシャーのオイルは水を吸収するから、使用前に洗浄を行わないと、せっかく作製した培養液のドロップが“ぺしゃんこ”になると」信じられており、洗浄操作が推奨されているようです。 Q28:顕微鏡で観察するとマウスやヒトの卵子や受精卵は透明感があり前核が見えますが、ウシやブタの卵子や受精卵は色が濃く前核が見えません。動物種によって卵子や受精卵の色の濃度が異なるのはなぜですか?
ウシやブタの卵子や受精卵は脂肪滴が多く、脂肪滴が多いと濃く見えます。特にブタの卵子や受精卵は脂肪滴が多く、凍結保存に弱いと報告されています。 Q29:胚盤胞を用いた注入キメラ胚の作成のため、過排卵処理マウスから胚盤胞を採取しようとして3.5 dpcに子宮を還流しましたが、ほとんど胚が回収できませんでした。なぜでしょうか?胚11/5/2016 Q29:胚盤胞を用いた注入キメラ胚の作成のため、過排卵処理マウスから胚盤胞を採取しようとして3.5 dpcに子宮を還流しましたが、ほとんど胚が回収できませんでした。なぜでしょうか?胚盤胞を効率に得る最も良い方法を教えてください?
経験的に、マウスに過排卵処理した後に子宮還流によって胚盤胞を得ることは困難であることが知られています。 過排卵処理の影響で自然な胚の移動より早く卵管内を通過すること、また、子宮口が開いて子宮に達した胚が体外に排出されてしまうと推察されます。 そのため、2.5 dpcで卵管と子宮を還流し、得られた8細胞期胚〜桑実胚を1晩培養して胚盤胞を得るのが効率的だと考えられます。また、自然排卵で3.5 dpcに子宮を還流して胚盤胞を得るのも一つの方法です。 ウイッテン効果に関するご質問と思います。オスマウスを雌の集団に入れ込むと、雌の発情周期が同期化するといわれています。そのため、例えば、オスマウスを上段、メスマウスを下段で飼育すると、メスの発情周期が同調してしまうことがあり、偽妊娠メスを作成するときなど、ある日に発情前期のマウスが集中してしまう場合もあります。
したがいまして、少なくとも同じラックに雌雄を同居させるのは避けた方が良いように思われます。 マウスは社会順位制を持つため、有意なオスを外しても残りの群の中でNo.2のオスが優位となり、再度喧嘩が始まるので個別飼育にするしかありません。
しかし、離乳直後から同居している雄同士であれば、喧嘩の程度は低いことが経験されています。 実験動物としてのマウスや野生マウスは、Mus Musculusに属します。従いまして、遺伝子改変マウスが野外に逃亡したら、野生マウスと交配してしまうと考えられます。
(しかし、逃亡したマウスが雌の場合は容易に雄の野生マウスを受け入れますが、実験動物化された雄マウスが雌の野生マウスと交配するのは至難の業と考えられます。) 両者にデメリットは無いように思われます。両方を試して自身に合った方法を採用してください。ちなみに、通常は経卵管采法を利用して、極端に卵管采が細かったり短かったりした場合(1%程度のマウスで経験します)に、卵管壁を切開して移植している人もいます。これは経卵管采法ではハサミを用いないことが理由となっているようです。
材質は硬質ガラスが適度なこしがあり移植には向いています。ドラモンド社のマイクロサンプリングピペット(200μl容)がその一例です。また、形状は先曲りを推奨している研究者もいます。これはピペットが曲がっていることで卵管采への挿入が容易となるためです。
卵子の移し替えなどの作業には、より柔らかいガラス(ドラモンド社のヘマトクリット管)が適当です。 最近は吸入麻酔(イソフルラン)が主流になってきています。注射薬よりも覚醒が早いのは大きな利点ですし、卵巣嚢の血管が収縮するのでボスミンを用いなくても出血することがほとんどありません。
ペントバルビタールなど向精神薬は、その管理・取り扱いが厳しくなってきております。また。非医薬品グレードの化合物(エーテルなど)の使用は妥当性などを動物愛護の観点からも判断を慎重に行わなければなりません。引火性もありますので、最近ではあまり推奨されるものではありません(施設によっては使用禁止といったところもあります)。 また、吸入麻酔におけるチューブの存在が手術の操作性に影響することを懸念する人もいるようですが、マスクの手前のチューブをマグネット付のクリップではさみマグネットを加温版に付けるとチューブの影響は少なくなります。 なお、三種混合麻酔とその拮抗剤の利用も多くなっているようです。 経験上は出産後7日目まで可能です。この場合は、里親の子供たちはすべて取り除き、里子のみを哺育させることが必要です。
Q37:マウスを連続同居で繁殖をしています。より効率的に生産するために早期に雄を雌から離して別の雌と交配させたいのですが、毎朝プラグを確認する余裕もありません。プラグを確認する以外に、何か良い交尾確認・妊娠診断法はありませんか?
古くから膣内に綿棒を挿入して胎盤徴候(出血を確認する)を検出する方法が知られていますが、より簡便な方法としては、触診による妊娠診断が可能です。妊娠10日目を過ぎると数珠状に配列した胎児を触ることができます。 マウスを保定して、親指と人差し指で腹側と背中側から挟むように子宮の位置を探ってください。小豆大の胎児が数珠状に連なっているのがわかります。慣れてくると胎児数も知ることが出来ますので練習してみてください。雌のお腹が大きくなってから雄を離すよりも5日〜7日は早期に雄の有効利用が可能です。 |