Q40:マウス腹腔内注射で過排卵処理をする際にPMSG(eCG)およびhCGの投与量が国際単位(IU)で記載されていました。天然ビタミンEは0.67mg=1IUとあったのですが、購入したアンプルのホルモンでは何mgで1IUなのかがわかりません。投与量5IUに調製する方法を教えてください。
ホルモンの場合、国際単位(IU)は説明書やアンプル等に記載されています。例えば、あすか製薬のゴナトロピンには、以下のように記載された製品があります。 ・ゴナトロピン筋注用1000単位 ・ゴナトロピン注用5000単位 これはアンプル1本に上記単位のホルモンが入っていることを意味します。すなわち、国際単位で1000単位、あるいは5000単位を含むということになります。マウスの場合、1000単位のアンプルであれば、20mlの生理食塩水に溶かすと、0.1mlあたり5IUとなります。一般に、マウスでは、両者のホルモンを1匹あたり5IU〜7.5IU投与しますので、0.1ml〜0.15mlを腹腔内注射しています。 アンプル1本を基準に考えれば良いので、重さを計測する必要はありません。
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一般的なマニュアル(例:マウス胚の操作マニュアル)にはeCGとhCGの投与間隔は42〜48時間と幅があります。また、これを実際に検討したデータがあり(日本実験動物技術者協会関東支部REG部会第20回特別講演会(2019年)、外丸祐介ら)、C57BL/6系統の場合、eCGとhCGの投与間隔は32〜56時間であれば排卵数に大きな違いはないという報告が成されています。さらに、IASe(Hyper Ova)とhCGの投与間隔が48〜54時間においては、排卵数に差がないことが知られています(第50回日本実験動物技術者協会総会 (2016) 中牟田裕子ら)。系統や週齢によっても異なってきますが、上記の報告から推察するとPMSG(eCG)とhCGの投与間隔は、48時間±6時間程度であれば、問題ないと思われます。
なお、ご承知のように、eCGは卵胞発育、hCGは排卵誘発作用があります。排卵はhCGを投与して12〜14時後ぐらいから始まりますが、マウス卵子の受精能保有時間は排卵後6〜8時間程度と考えられていることから(受精能保有時間を過ぎた老化卵子を体外受精に用いると、受精率や発生率に大きな影響を及ぼすため)、hGC投与後18時間以内に採卵・媒精することをお勧めします。 結論から言いますと、PMSG(eCG)もHyper Ovaも4週齢(幼若)あるいは10週齢(成熟)がお勧めで、最適週齢に違いはありません。しかし、Hyper Ova の場合は、eCGが効きにくいと言われる5〜7週齢でもeCGと比較して、排卵数が有意に多くなるデータが示されています。
C57BL/6は晩熟型の系統で、性腺系が確立するまでの移行期(5~8週齢)、特に性成熟に達する直前直後の7~8週齢で、内因性のホルモンバランスが不安定であると考えられています。従って、7~8週齢がeCGへの反応性が最も弱く、発育卵胞数が少なくなると推察されています。また、マウスでは4週齢以降、すでに卵胞発育を阻害するインヒビンを分泌している可能性があり、これが直接的あるいは間接的に発育卵胞数をさらに減らしているものと考えられています。 Hyper Ovaは抗インヒビン血清とeCGから作られており、これを使用すると、分泌されているであろうインヒビンを抗インヒビン血清が中和するため、5~8週齢でもeCG単独よりも排卵数が多くなると考えられています(参照論文のTable 1のeCGとIASeのデータ参照)(eCG:14〜29個、IASe:26〜54個)。 繰り返しになりますが、Hyper Ovaも幼若の場合は4週齢、成熟の場合は10週齢に投与が理想ですが、4週齢、10週齢のメスマウスが手に入らない場合でも、すべての週齢でcCGに比べて排卵数が有意に多くなるHyper Ovaの使用は効果的だと考えられます。 詳細は以下の論文を参照ください。 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0093691X19301669?via%3Dihub |